父の遺言書

父が他界しました。公証役場に父の遺言書が保管されていたのですが、それとは別に自宅の金庫から自筆の遺言書が見つかりました。日付を見るとどうやらこちらのほうが後から書かれたもののようです。また、日付のないものや判のないものも見つかりました。筆跡は間違いなく父のものだと思います。内容がそれぞれ異なるので困っています。やはり公証役場に保管されていたものが有効なのでしょうか。

 遺言書は、亡くなった方が自分の死後のことを思いめぐらせしたためたものです。そのため、生前に定期的に作成し直し保管されているということは珍しいことではありません。実際に複数の遺言書が見つかると慌ててしまうかもしれませんが、どれが有効であるかを判断する方法は実はとても簡単です。

まず、遺言書には必ず日付と押印が必要です。したがって、ご自宅の金庫に保管されていた「日付のないもの」及び「判のないもの」はこの時点で無効となります。

次に注目すべき点は、その遺言書が「いつ書かれたものであるか」です。

遺言書というものは、最後に作成されたもの、つまり最新のものが有効であると法律で定められています。作成日の異なる遺言書が複数発見された場合、内容の如何に関わらず、最新の日付のものが有効とされます。新しい遺言書によって古い遺言書は取り消されたものとみなされるのです。

 また、遺言書には自らが作成する自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言がありますが、有効性をみる場合、どちらかが優先して効力を持つということはありません。一見、公証人という専門家が作成し公証役場で保管されている公正証書遺言の方が有効だと思われるかもしれませんが、公正証書遺言を作成したものの、後になって事情が変わり、内容の異なる自筆証書遺言を作成・保管したということがあったとしても、何ら不思議ではなく、最新の日付のものが有効であるという原則が変わることはありません。

 これらを踏まえると、今回のケースの場合、ご自宅の金庫で保管されていた日付・押印のあるものが有効な遺言書といえるでしょう。