月間なごやか

「月刊なごやか」は名古屋や周辺地域のおでかけ情報、イベント情報、エッセイなど、地域に根付いた情報をお届けするマガジンです。

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月刊なごやか刊行

概要

編集コンセプトなごやを知る・考える・行動する
創刊1986年10月1日
サイズB6版
発行頻度毎月1回発行
発行部数3万部
販売価格340円
販売方法主に会員制(会員店に毎月配布)

内容

~特集~ 

毎月一つのテーマを決めて特集を組みます

  • 日帰り温泉紹介
  • 美術館の紹介

~ここに人あり~


著名人や名古屋で活躍されている人、地域を動かす人などをインタビューで紹介する。

  • 札幌かに本家  日置達郎氏
  • 盛田株式会社  盛田和昭氏
  • 杉本組     杉本高男氏

~会員情報~

会員になっていただいている企業がお店を紹介する

名古屋の情報誌といっても、名古屋地域に限定せず、京都奈良など、遠方にも足を伸ばして、
その土地の歴史や文化など、紹介しています。
読者からの意見も取り入れ幅広い年齢層の読者に受けいれられる雑誌作りを目指しています。

駿栄社

「月刊なごやか」などを出版する「駿栄社」は、地域密着型のなごやかな企業です。
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法律Q&A

andLEGAL弁護士法人
6人の弁護士が在籍し、あらゆる問題から、あなたやあなたの大切な人々を守ります。
お気軽にご相談下さい。
30分間法律相談無料プレゼント
お電話でのご相談は 052-951-8266まで

 春馬 学先生

※矢印を押すと回答が開きます

相続編 住み慣れた家を手放すことに?

先月、夫が亡くなりました。
 夫には、夫名義の自宅(4000万円相当)と現金3000万円の合計7000万円相当の遺産がありましたが、夫の生前から不仲であった息子からは法律に従って相続分を渡すように言われています。
 私は夫との思い出のつまった自宅で生活していきたいと考えています。ただ、私と息子の相続分は二分の一ずつですので、3500万円ずつわけるとすると4000万円の自宅に住むことができません。どうすれば良いのでしょうか。

相続編 住み慣れた家を手放すことに?

A.  この場合、妻と息子は二分の一ずつ財産を相続する権利があります。よって総額7,000万円の財産を2人で二分の一し、3,500万円ずつ受け取ることになります。
 妻が夫の死後も同じ家に住み続けることになると、4000万円の家を相続することになるため、自身の相続分より500万円オーバーすることになり、現金を相続できず、さらに500万円の現金を息子に渡すことになります。
 もし500万円の用意ができず、もしくは今後の十分な生活費が確保できないという場合、結果的に住み慣れた家を手放さざるを得ないという事態が考えられます。
 これに対処するために、2020年4月からの民法改正で考えられたのが配偶者居住権があります。
 お尋ねのケースですと、配偶者居住権が認められる場合は、妻と息子はまず現金の3,000万円を折半し、1,500万円ずつ相続します。
 次に4000万円の家について、仮に配偶者居住権が半分、残りの所有権が半分の価値があるとしたとき、妻が相続する2,000万円が配偶者居住権となり、息子の相続する2,000万円が負担付きの所有権となります。
 配偶者に先立たれたあとも安心して愛着ある家にすむことができるこの権利は超高齢化社会といわれる現代に適した権利と言えるでしょう。
 ただし、この配偶者居住権は生存する配偶者に自動的に与えられるものではなく遺言書にその旨明記されているか、権利割合も含め遺産分割協議で決めることが必要です。

知人に貸したお金を返却してもらえるのか 65歳男性の方からのご相談
 15年ほど前に知人に貸した100万円を返してもらいたいと思っていますが2020年4月から民法が改正されて消滅時効の制度が  変わったと聞きました。
 具体的にどのように変わったのでしょうか。おしえてください。

1. 消滅時効とは

 消滅時効とは、権利が一定期間行使されない場合に、その権利を消滅させる制度で、法律で定められた期間が経過した後に、当事者等が消滅時効制度を利用することを告げることにより権利が消滅する制度です。
 改正前の賃金の消滅時効期間は10年ですので15年前に貸した100万円は時効期間が経過しています。そのためその知人が消滅時効を援用すると返してもらうことができなくなります。

2.2020年4月からの改正について
(1) 一般の債権(貸金等)の変更
① これまで
     権利を行使することができる時から10年とされていました。
② これから
 権利を行使することができることを知った時から5年または、権利を行使することができる時から10年のいずれか早い方とされました。
③ 違い
 これまでは10年経たないと時効にはなりませんでしたが、これからは5年で時効になるケースが出てきますので、時効の期間が短くなったといえこの点に注意が必要になります。
     
(2) 時短消滅時効の廃止
① これまで
 例えば旅館の宿泊代の時効期間が1年であったり、医師の診察代の時効期間が3年であったりと、法律によって特別に短い期間が定められていました。
② これから
 これらの短期の時効期間は廃止され、基本的に上記(1)の一般の債権と同様になりました。
③ ちがい
 旅館の宿泊代や医師や診察代の時効期間は、5年(10年)と長くなったといえます。
(3) 不法行為債権
① これまで
 被害者が損害の内容と加害者をしったときから3年または不法行為の時から20年とされていました。
② これから
 基本的には知ったときから3年または行為の時から20年で時効となります。
 ただ、生命、身体の侵害に関する損害賠償請求権は、知った時から5年または行為の時から20年とされました。
③ ちがい
これまでは、例えば交通事故により怪我をしてしまった場合に3年で時効になってしまっていましたが、この期間が5年に延びたことになります。
2. 最後に
このように民法の改正によって、これまでと大きく消滅時効の制度は変わりました。
細かな違いがありますので都度確認頂く必要がありますが、おおまかには「知ったときから5年」と覚えておいていただければと思います。

遺言書を残したい

63歳男性の方からのご相談

自分の死後、遺産のことで子どもたちが揉めないよう、遺言書を作成したいと思っています。

民放の改正で遺言の制度が変わったと聞きましたが、具体的にはどのように変わったのでしょうか。

1.自筆証書遺言の方式緩和

  • 改正前

これまでは全てを手書きで作成しなければならず、財産が多数ある場合に、不動産の詳細情報や金融機関の口座情報を手書きすることが大きな負担となっていました。

  • 改正後

財産目録(財産の情報をまとめた部分)についての様式に規定がなくなりました。つまり、パソコンによる作成はもちろんのこと、預貯金通帳の写しや不動産の登記事項証明書を添付することで「財産目録」とすることが可能となり、負担が軽くなりました。ただし、偽装防止のために全てのページに署名及び押印が必要です。

 2 自筆証書遺言保管制度の導入

  • 改正前

作成した遺言書を保管してもらえる公的機関がなく、せっかく作成した遺言書が死後に探しても見つからない場合や遺言分割をした後で発見されるというケースがありました。

  • 改正後

 所定の手続きを踏むことで法務局に保管してもらえることになりました。これにより、紛失することがなく、発見した人によって破棄されるといった心配もなくなりました。

 さらに、この制度を利用した場合、保管時に形式上の不備がないかをチェックしてもらえます。また検認(遺言書発見後、家庭裁判所に持参し内容を確認すること)の手続きが不要となりました。

 これらの制度により、私たちによって遺言書がより身近なものになったと言えるでしょう。ただ、注意しなければならないのは法務局では保管時に形式面でのチェックはしてもらえますが、内容面までのチェックは行われません。自筆証書遺言書は、その有効性という点ではやはり以前疑問が残ります。

 その点、公証役場で作成される公正証書遺言は、公証人が作成に関わることで、内容面での不備を防ぐことができ、法的に極めて有効性が高い遺言書を作成することができます。

 より確実に作成することを重視するのであれば、手間はかかりますがこれまでどおり公正証書遺言によることが最も安心な方法と言えるでしょう。

賃貸契約を終了させるには

48歳男性の方からのご相談

 賃貸マンション経営をしています。マンションの老朽化が進み、立て替えを行いたいため、現在の入居者との賃貸借契約を終了させたいと考えています。契約を終了させるにはどうしたらよいでしょうか。

1.借主との合意による解約

賃貸賃借契約を終了させるにあたって一番確実なのは「借主の合意を得ることです」

2 飼主の合意が得られない場合の手続

 借主の合意を得られないとき、賃貸借契約において①契約期間の定めがある場合と②契約期間の定めがない場合で取扱いが異なります。

  • 契約期間の定めがある場合

貸主は契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に[更新拒絶通知]を借主に出すことになります。

  • 契約期間の定めがない場

貸主は[解約申入れ]を貸主に出す必要があり、この解約申入れから6ヶ月が経過した時点で契約は終了することになります。([解約申入れ]はいつでも出すことができます)

  1. 注意点(解約には正当事由が必要です)

 以上のことから考えると、借主の合意が得られなくても[更新拒絶通知]または[解約申入れ]をだせば貸主側の都合で柔軟に賃貸借契約を終了させることができるように思います。

 しかし、借主の合意が得られない場合に賃貸借契約を終了させるには[正当事由]が必要とされています。

 この[正当事由]が実に複雑で、a建物の賃貸人及び賃貸人(転借人を含む)がそれぞれ当該建物の使用を必要とする事情、b建物の賃貸借に関するこれまでの経過、c建物の利用状況d建物の現況f建物の賃貸人建物の明け渡しの条件として立退料の申し出が出た場合にはその申出、これらを総合的に考慮して、更新の拒絶または解約の申入れに正当の理由があるかを決めることにされています。

 つまり事案ごとにケースバイケースの判断となるため、単に更新拒絶通知や解約申入れを行っただけでは契約を終了させることはできないという点を重々ご承知沖頂く必要があります。

 お尋ねのケースですと、建物の老朽化の程度によって結論が変わってきます。立て替えが必要なほど老朽化しているのであれば正当事由は認められやすくなりますが、そうでない場合は立退料などの支払いを行うことも検討する必要があるでしょう。

妻に財産の多くを遺してあげたい

2歳の男性の方からのご相談
私には妻と2人の子ども(長男、次男)がいます。私が亡くなった後に、長年連れ添ってくれた妻が生活に困ることが無いよう、妻に財産の多くを遺してあげたいと考えています。どのような方法が考えられるでしょうか。

1. 相続分の確認
まず法律に従った相続分を確認しましょう。お尋ねのケースですと、妻に2分の1、長男に4分の1、次男に4分の1の権利があります。
2. 遺言書の作成
財産をどのように分けるかについて、遺言書を作成しておく必要があります。自筆で作成することも可能ですが、公正証書などにしておくとより確実です。
3. 具体的な方法
① 個別に財産の分配をする方法
一般的な遺言の方法です。自宅と預貯金を妻に、有価証券を長男と次男に相続させる、などのように具体的に分ける財産を指定する方法です。
② あまり聞き慣れないと思いますが、相続人らが揉めることを避けたいような場合や、生前のさまざまな援助(特別受益)があって、下記の注意点に記載する遺留分の範囲が明らかで無いような場合には、相続分を指定しておくという方法があります。
 お尋ねのケースですと、例えば妻の相続分を4分の3に、長男と次男の相続分をそれぞれ8分の1に指定する、などの形で相続割合を指定することができます。
4. 注意点
① どのような方法によるとしても、遺留分の侵害には注意する必要があります。
 お尋ねのケースですと、長男と次男の相続分について、8分の1を下回ることはできません。この点を怠るとかえって相続争いの原因になってしまいますので注意が必要です。
② 相続分の指定の場合には遺産分割が別途必要になること。
 上記③の相続分の指定は割合を指定するのみですので、具体的な財産を分けるには相続人らで協議をする必要があります。
③ 債務の指定はできないこと。
      例えば銀行からの借入金が800万円ある場合に、このうち600万円を妻に、長男と次男にはそれぞれ100万円を負担させると指定した場合、銀行はその通りの金額を請求することもできますし、相続分通り妻に400万円、長男と次男それぞれに200万円請求することが出来ます。

次男に財産を相続させたくない

65歳男性の方からのご相談
 私には配偶者(存命)との間に長男と次男の二人の子どもがおりますが、次男とは折り合いが悪く、自分の死後、遺産を相続させたくありません。何か方法はないでしょうか。

養子縁組の手続きを行う
 養子縁組の手続きを行うことで、本来親子関係になり人と法律上の親子関係を生じさせ、実子と同じように自分の財産を相続させることにより、結果として特定の相続人への相続分を少なくするという方法が考えられます。
ご相談のケースのように、に配偶者と実子2人がいる場合、通常であれば、法定相続分は配偶者2分の1、実子各4分の1となり、遺留分は配偶者4分の1、実子各8分の1となります。
長男の子(孫)と養子縁組をする
 ご相談者さまが、長男になるべく多く次男になるべく少なく相続させたいとお考えの場合、例えば長男の子(ご相談者さまの孫)と養子縁組をすることが考えられます。こうすることで、長男家族の法定相続分は6分の1+6分の1=3分の1、遺留分は12分の1+12分の1=6分の1となる一方、次男の法定相続分は6分の1、遺留分は12分の1となります。
 仮に、配偶者へは法定相続分を、長男家族へは残りの財産のうちできるだけ多くを、次男へは遺留分のみを相続させるとすれば、配偶者は2分の1、長男家族は12分の5、次男は12分の1とすることが可能になります。
 また、養子縁組を行うと法定相続人が増えることから、相続税の基礎控除額や生命保険の非課税限度額が増え、節税効果にもなります。
注意点
 養子縁組を行う際、本人が成年であれば特段難しい手続きは発生しませんが、養子が未成年の場合、例外を除いて家庭裁判所の許可を得る必要があるなど、成年の場合とは異なる点があるので注意が必要です。

成年後見制度とは?

51歳女性の方からのご相談
最近、友人が、「母親の認知症が進んできて、自分では判断ができなくなっているから、成年後見制度を利用して成年後見人をつけてもらった」と言っていました。私の親は遠方に住んでいます。コロナ禍の中、会いに行って面倒を見ることが難しいので心配です。そもそも、成年後見制度ってどういうものなのでしょうか。

自分の判断能力が不十分なため契約等の法律行為を行えない人をサポートするために設けられた制度です。

 この成年後見制度には大きく分けて「法廷後見制度」と「任意後見制度」があります。

法廷後見制度とは
 既に本人の判断能力が不十分な時に、周囲の人の申立によって家庭裁判所が判断能力の程度を考慮の上、「後見」「補佐」「補助」の3つの区分のいずれにあたるかを判断し、それに応じたサポートを後見人等(後見人、保佐人、補助人)から受けることのできる制度のことで、後見人等は家庭裁判所が選任し、その報酬も家庭裁判所が決定します。
 後見人等は、預貯金の管理や解約のほか、介護保険契約の諦結や保険料、介護施設利用料金に支払等の身上監護に関することを行ったり、不動産の処分や相続手続きを進めるなどもあります。

一任意後見制度とは
 将来判断能力が不十分になった場合に備え、本人が判断能力の十分なうちに自分で後継人を選び、公正証書で契約を結んでおくものです。
 この制度は、裁判所の手続きを経ることなく、公正役場で任意後見契約書を作成するため、サポート内容は基本的に自分で自由に決めることができます。
 「財産の管理をしてほしい」「入院や介護等が必要になった時に必要な契約ごとをしてほしい」等、自分の希望に沿った形にしやすいという特徴があります。
 また、法廷後見制度の場合は家庭裁判所が後継人の報酬を決定するのに対し、任意後見制度の場合は本人と後見受任者との間で自由に決めることができます。
 さらに、万全を期したいという場合は、任意後見契約の締結に加え、日常生活の困りごとを弁護士に相談できるようにホームロイヤー契約を締結したり、自分の死後、家族間でもめ事が起こらないよう遺言書を作成すること等も視野に入れるとより安心と言えるでしょう。

父の退職金の行方は?

32歳男性の方からのご相談
父が事故に遭い亡くなってしまいました。
父の勤務先から退職金が出るようで、相続人は母と長男である私なのですが、母はずっと前から別居状態にあり、私と母とは折合いが悪く、話し合いが難しい情況です。
父の退職金はどうなってしまうのでしょうか。

1 まず、お父様が亡くなったのが退職金を受け取った後である場合は、預貯金等と同様に通常の相続財産となりますので、相談者様とお母様で遺産分割協議をしていただく必要があります。

2 では、お父様が会社に勤めている間に亡くなって、退職金が遺族に支給される、いわゆる死亡退職金の場合について検討してみたいと思います。

この問題について、裁判所は、「受給権者が法律・条例等で定まっている場合、退職金は、その者固有の権利となり、相続財産には包含されない」としています。

 例えば、お父様が公務員等であった場合は、死亡退職金の性質は、その支給を定めた法律により決まることになります。
 具体的には、国家公務員退職手当法には,死亡退職金が支給される遺族の範囲・順序について,以下のように定められております。
1 配偶者(内縁の配偶者も含む。)
2 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの
3 職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族
4 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で2に該当しないもの
この法律によりますと、たとえ子であっても、当該公務員の収入に頼らず生活していた場合には、第4順位となってしまいますが、反対に、第1から第3順位の者がいない場合は、第4順位の者にも受給資格がある,ということになります。

 お父様が私企業に勤務していた場合は、当該企業の退職金規定により定められた受給者が受け取ることができることになりますので、相続財産とはならず遺産分割は不要です。
 なお、退職金規定に死亡退職金の受給者の定めが無い場合が問題となりますが、判例は、会社の理事会が死亡退職金を受給すべき者を決めた場合、その受給者の固有の権利であるとしています。
 そのような場合には、会社に問い合わせをしていただき、受給者を決定してもらうよう働きかけることが必要となると考えられます。

48歳男性の方からのご相談

父が他界しました。公証役場に父の遺言書が保管されていたのですが、それとは別に自宅の金庫から自筆の遺言書が見つかりました。日付を見るとどうやらこちらのほうが後から書かれたもののようです。また、日付のないものや判のないものも見つかりました。筆跡は間違いなく父のものだと思います。内容がそれぞれ異なるので困っています。やはり公証役場に保管されていたものが有効なのでしょうか。

遺言書が何通もあり困っています

遺言書は、亡くなった方が自分の死後のことを思いめぐらせしたためたものです。そのため、生前に定期的に作成し直し保管されているということは珍しいことではありません。実際に複数の遺言書が見つかると慌ててしまうかもしれませんが、どれが有効であるかを判断する方法は実はとても簡単です。

まず、遺言書には必ず日付と押印が必要です。したがって、ご自宅の金庫に保管されていた「日付のないもの」及び「判のないもの」はこの時点で無効となります。

次に注目すべき点は、その遺言書が「いつ書かれたものであるか」です。
遺言書というものは、最後に作成されたもの、つまり最新のものが有効であると法律で定められています。作成日の異なる遺言書が複数発見された場合、内容の如何に関わらず、最新の日付のものが有効とされます。新しい遺言書によって古い遺言書は取り消されたものとみなされるのです。

 また、遺言書には自らが作成する自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言がありますが、有効性をみる場合、どちらかが優先して効力を持つということはありません。一見、公証人という専門家が作成し公証役場で保管されている公正証書遺言の方が有効だと思われるかもしれませんが、公正証書遺言を作成したものの、後になって事情が変わり、内容の異なる自筆証書遺言を作成・保管したということがあったとしても、何ら不思議ではなく、最新の日付のものが有効であるという原則が変わることはありません。

 これらを踏まえると、今回のケースの場合、ご自宅の金庫で保管されていた日付・押印のあるものが有効な遺言書といえるでしょう。

財産は三人姉妹均等に相続?

38歳女性の方からのご相談
私は三人姉妹の三女です。
先月、長年身の回りの世話をしてきた父親が亡くなりました。姉たち(長女及び次女)は住まいが遠方なこともあり、父親の面倒を見ることができませんでした。自宅を整理したところ「財産は三人姉妹均等に相続させる」という内容の遺言書が見つかりました。姉たちは面倒を見ていない自分たちが妹と同等の財産を相続するのは申し訳ないと言っています。このような場合でも、遺言書の通りに相続手続きを進めなければいけないのでしょうか。

結論から言うと、遺言書と異なる内容で相続手続きすることは可能です。
 ただし、これには「相続人全員が遺言書の存在を知り、その内容を理解した上で相続人全員の合意のもと、新たに遺産分割協議を行う」必要があります。
 つまり、ご相談者さまお二人がお父さまのの遺言書を確認した上で、合意が得られるのであればお父さまが作成された遺言書とは異なる内容で相続手続きを行うことができます。
 当事務所で同じようなケースのご相談をお受けし、依頼者の代理人として他の相続人ら(依頼者の兄及び弟)を相手方として交渉を行ったことがあります。
 始めは「財産を均等に分けるべきだ」と頑なな態度であった方もいましたが、交渉を行っていくうちに、「確かに、面倒を見てこなかった自分たちよりも、長年父親の身の回りの世話を一手に引き受けてくれていた妹(依頼者)がより多くの財産を引き継ぐのが望ましい」という意向になりました。
 その結果、本件では、被相続人である父親の相続財産を全て換金し、依頼者が二分の一、兄と弟は4分の1ずつをそれぞれ相続するという内容の遺言書分割協議書を作成することができました。
 このように、遺言書の存在及び内容を相続人全員が知った上で、遺言書と内容の異なる遺産分割協議を行うのであれば、その有効性に何ら問題はありません。
 ただ一方で、相続人全員が遺言書の存在を知らないで遺産分割協議を行い、その後、遺言書の存在が発覚した場合、「遺言書の存在を知っていたならばそのような遺産分割協議は行わなかった」といえるならば、分割協議における意思表示は、錯誤により無効(民法95条)となる可能性があります。