Q.
父が事故に遭い亡くなってしまいました。
父の勤務先から退職金が出るようで、相続人は母と長男である私なのですが、母はずっと前から別居状態にあり、私と母とは折合いが悪く、話し合いが難しい情況です。
父の退職金はどうなってしまうのでしょうか。
A.
1 まず、お父様が亡くなったのが退職金を受け取った後である場合は、預貯金等と同様に通常の相続財産となりますので、相談者様とお母様で遺産分割協議をしていただく必要があります。
2 では、お父様が会社に勤めている間に亡くなって、退職金が遺族に支給される、いわゆる死亡退職金の場合について検討してみたいと思います。
この問題について、裁判所は、「受給権者が法律・条例等で定まっている場合、退職金は、その者固有の権利となり、相続財産には包含されない」としています。
例えば、お父様が公務員等であった場合は、死亡退職金の性質は、その支給を定めた法律により決まることになります。
具体的には、国家公務員退職手当法には,死亡退職金が支給される遺族の範囲・順序について,以下のように定められております。
1 配偶者(内縁の配偶者も含む。)
2 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの
3 職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族
4 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で2に該当しないもの
この法律によりますと、たとえ子であっても、当該公務員の収入に頼らず生活していた場合には、第4順位となってしまいますが、反対に、第1から第3順位の者がいない場合は、第4順位の者にも受給資格がある,ということになります。
お父様が私企業に勤務していた場合は、当該企業の退職金規定により定められた受給者が受け取ることができることになりますので、相続財産とはならず遺産分割は不要です。
なお、退職金規定に死亡退職金の受給者の定めが無い場合が問題となりますが、判例は、会社の理事会が死亡退職金を受給すべき者を決めた場合、その受給者の固有の権利であるとしています。
そのような場合には、会社に問い合わせをしていただき、受給者を決定してもらうよう働きかけることが必要となると考えられます。